1~10torrの窒素混合ガス雰囲気炉内で、炉体を陽極、製品を陰極にして数百ボルトの直流電圧を加えるとグロー放電が生じます。イオン化されたガス成分は電位ドロップ(陰極降下現象)で加速され、製品に衝突して加熱します。同時に起こるスパッタリング作用などによって表面に窒化鉄が生成され、内部へと窒化層が形成されます。部分窒化が必要な場合、窒化不要箇所をカバーして放電させないようにするだけで窒化防止することができます。この窒化はイオン窒化とも呼ばれます。
通常の窒化処理は、製品表面に高硬度な化合物層を生成しますが、切削工具の高品質化、長寿命化においては、むしろ化合物層が非常に固いために脆く、刃先が欠損してしまうこともあります。これに対し、ファイン窒化処理では、窒素を極めて薄くコントロールすることで化合物層が全く生成せず、PVD処理に匹敵する寿命を工具に与えることができます。また、鏡面加工の面を荒らさずに窒化ができますので、後工程を簡略化できます。
温度が上昇すると、物質は固体から液体に、液体から気体にと状態が変化します。気体の温度が上昇すると気体の分子は解離して原子になり、さらに温度が上昇すると原子核のまわりを回っていた電子が原子から離れて,正イオンと電子に分かれます。この現象は電離とよばれています。そして電離によって生じた荷電粒子を含む気体をプラズマとよびます。このプラズマを利用したプラズマ窒化処理は、環境にも優しい窒化法です。