とりねつ通信13
- 発行日:2010/01/04
- 発 行:鳥取県金属熱処理協業組合
- Tel:0859-24-0363 Fax:0859-29-5699
- e-mail:miyano@torinetsu.jp
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申しあげます。
新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年最初の“とりねつ”通信は、前回に引き続き窒素を使った熱処理について紹介いたします。
とりねつの窒素利用熱処理技術 ~前回より引き続き~
- ファイン窒化(プラズマ窒化の応用技術)
通常の窒化処理は、製品表面に高硬度な化合物層を生成しますが、切削工具の高品質化、長寿命化においては、むしろ化合物層が非常に固いために脆く、刃先が欠損してしまうこともあります。これに対し、ファイン窒化処理では、窒素を極めて薄くコントロールすることで化合物層が全く生成せず、PVD処理に匹敵する寿命を工具に与えることができます。
- TORINITE-S[トリナイト-S]処理(ステンレスの耐食性を落とさずに表面硬化)
オーステナイト系ステンレスに通常の窒化処理を施すと耐食性が低下します。TORINITE-S(トリナイト-S)処理は800HV以上の硬い層を10μm程度形成し、耐食性と耐磨耗性を両立した処理となります。形成された硬い層はS相と呼ばれ従来の窒化とは異なり高耐食性,非磁性などの性質を持っています。
以下は窒化でなく、窒素を利用した焼入れ技術です。
- 浸炭浸窒焼入れ処理(炭素と窒素を同時に入れた焼入れ方法)
浸炭を行う際にアンモニアを添加することにより浸炭と浸窒を同時に行うことができます。浸炭浸窒焼入れは、焼入れ性の悪い材料でも硬化層を得ることができ、浸炭組織に比べ、耐摩耗性や焼戻しによる耐軟化性に優れています。
- TORIQUENCH-N[トリクエンチ-N]処理(浸窒焼入れ処理)
TORIQUENCH-N(トリクエンチ-N)処理は、炭素に替わり窒素によるマルテンサイトを生成する新しい焼入れ方法です。“窒化処理では硬化層深さが足りない”,“浸炭処理では歪が大きい”といった部品への適用が最適です。この処理は
浸炭可能な材料に適用可能です。
以上、2部にわたり窒素利用を中心とした熱処理技術を紹介いたしました。窒素は炭素と似た挙動を持つ興味深い物質となります。また地球上に大量に存在しており有効利用可能な物質でもあります。“とりねつ”ではこれらの物質を有効利用し今後も有用な熱処理技術の開発に努めます。
敬具
※現在“とりねつ通信”はFAXで皆様に配信しております。
ご希望の方はメール配信も可能ですのでご連絡下さい。