拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申しあげます。
今回は、お客様の変形(寸法変化)に関するご質問(その3)にお答えするために、第15号を発行いたしましたので参考にしていただければ幸いです。
Q.熱処理すると寸法が変化しますか。
A.以前の “とりねつ”通信11で熱処理することにより、金属組織内部の結晶構造が変態により変化することを説明しました。外観は同じでも、中の結晶構造は全く別物となり、硬度が高くなったり、じん性が増したりします。この結晶構造の違いにより、寸法が縮む又は伸びることがあります。更に、焼戻し温度や形状(長板,筒状)で寸法変化が異なります。焼入れ後の焼戻し温度で硬度が決まり、その時寸法も決まるのです。下図はSKD11のおおよその寸法変化率を示したものです。たとえば硬度60HRCを狙うとき低温焼戻し(180℃)でも高温焼戻し(500~510℃)のどちらでもいいですが、寸法変化は高温焼戻し(500~510℃)が最小になります。狙い硬度により焼戻し温度を変えるため、寸法変化も変わってきます。精度の高い製品の場合は、是非お問合せください。