貴社ますますご盛栄のこととお慶び申しあげます。
とりねつ通信の発行に少し間があきましたが、これからもよろしくお願いします。
今回のとりねつ通信では、熱処理での依頼品の割れについて紹介します。1回分では、お伝えできないので、2回にわたって紹介致します。
棒状の物が真っ二つに折損したものやエッジ部分(切り欠き)から薄肉部に亀裂が生じたものをいいます。当組合において、一昔前から比べると現在ではかなり発生数は少なくなりましたが、未だに無くすことのできない不具合のひとつです。ではなぜそのような割れが生じた又は生じるのかを考えてみたいと思います。
割れの原因には以下の3つの要素があります。
依頼品の割れは、だいたいこの3種類で説明できます。
①については、以前は恥ずかしい話ですが当組合が熱処理を実施するに当たり、無知であったり、慣れていなくて発生する事例もありました。SC材の焼戻し時、冷却に水をかけるようなことをしますが、SKD材(ダイス鋼)にまで早く冷却させるために水をかけ割ってしまったと聞いたことがあります。(ずいぶん昔のこと)また、ハイスの焼入れままの棒状の依頼品が2mmくらい曲がっていたために、プレス機械で矯正しようとして、真っ二つに折れ、勢いよく飛んでいったこともありました。
②については冷却速度を早くしなければならない材質や均等に冷えない形状のものは曲がりが発生しやすくなります。これらが原因の場合、曲がりの延長線上に割れがあると言えるかもしれません。例えばSK材他で焼入れ後、変形の大きなものを、プレス焼戻しで矯正しようとして、穴や薄肉部のあたりから折損することが度々おこり、お客様に大変迷惑をかけ、中には矯正しなくて良いと言われることもありました。これらは油焼入れ品(SKS,SUJ等)に多く発生する傾向があります。他にも、焼入れして炉から出た依頼品は、まだ100~200℃位の温度であり焼戻し前に焼入れ油を取り除くため直ぐに洗浄し冷やしきると、焼割れが発生しやすくなります。またエッジ部分(切り欠き)が内径にあるか外径にあるかで昇温時か降温時に亀裂を生じることがあります。エッジ部分の位置によっても割れるタイミングは違います。このように原因は様々でありますが、当組合は、熱処理を実施するなかで、焼割れが発生するメカニズムを解析し割れが出ないよう継続的改善を実施していきます。
次回は最近多くなってきた③の材料・組織について説明します。
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