5月22日日本熱処理技術協会秋季講演大会の会場において、技術経営賞(赤見賞)の表彰式が執り行われ、同協会の奥宮会長から馬田専務理事に表彰状が授与されました。
同協会中部支部長大林様のご推薦により、受賞させていただいたものであり、推薦理由は以下の通り。
馬田(マダ) 秀文(ヒデフミ) 君
業績題目 「とりねつマネジメントシステムによるオンリーワン技術開発と健全経営の実践」
馬田秀文君は大学卒業後、鳥取県工業試験場に採用され、日立金属株式会社(安来工場)などへ2年間出向し、熱処理の基礎を学んだ。1980 年に鳥取県金属熱処理協業組合(以下とりねつ)発足と同時に職員として転籍し、熱処理現場作業を中心にオンリーワン熱処理技術やオリジナル治工具を開発して受注の拡大に努めた。
その後、ISO の管理責任者を兼務し、1996 年に ISO9002(現在は ISO9001)、2000 年に ISO14001、2005 年に OHSAS18001(現在は ISO45001)を国内金属熱処理事業者では 1~2 番目の早期に認証を取得した。
また、1990 年頃よりとりねつ働き方改革に着手し、多能工化を推進してローテーション勤務を定着させ、生産性の向上を実現した。更にその他の仕組みを連動させた「とりねつマネジメントシステム」を完成させた。このシステムは、職員が意欲的にやりがいをもって仕事に取り組める環境を整え、教育・訓練、DX、品質管理、福利厚生、人事労務などを有効的に機能させ、人材の育成と確実な品質保証を実現する指標となる10 の特徴を有している。
この成果は、例えば 2022年の第1回 熱処理コンテスト(日本熱処理技術協会中部支部主催)優勝に現れている。2010 年に専務理事となった同君は、熱処理コンテスト参加志望した若手にプロジェクトチームを結成させ、教育・訓練されたメンバーは、熱処理の構想、設計、試作、評価、対策の PDCA サイクルを回し、熱処理コンテスト優勝をもたらす試験片を製作した。下記に優れた取組みの一部を示す。
① 真空熱処理、高周波焼入れ組合せ〔特徴1:多能工による異種熱処理の活用〕
② チーム外ベテラン技術者への援助要請 〔特徴 4:民主的で一体感がある環境〕
③ 目標未達へ迅速な緊急対策品の製作〔特徴 7:不適合管理と緊急時訓練〕
つまりこの優勝は、優れた固有(熱処理)技術に加え、経営マネジメントにより視野が広い前向きな人材や、コミュニケーション力、緊急対応力などが発揮された成果である。
鳥取県は工業・産業的にも人的にも厳しい環境ながら、同君は人を育て、技能と技術を向上させ、世界から仕事を獲得する素晴らしい熱処理事業経営をしてきた。このことは、熱処理業界はもちろん、広く日本のものづくりの会社のお手本となる経営手法である。